虫歯に関するトピックス
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No.13. 雛人形に見る食生活の変化


<徳川家康の肖像画 四角いエラ張り顔である。>

現代の若者には,顎が細く面長な顔が増加していると言われている。
噛まなくてもよい,軟らかい食物の増加による影響と考えられている。
どうして食生活が変わると,顔の形も変わるのだろうか?
この理由について,徳川将軍の例はあまりにも有名だ。
初代将軍の家康は,肖像画にも描かれているように,エラの張った四角い顔である。
ところが将軍家の食物が軟らかくなるにつれ,代々の将軍の顔が変化している。
このことは,12代将軍の家慶・14代将軍の家茂の頭蓋骨が,面長で華奢になって
いることからわかる。
なかでも家茂は,甘いものが大好物で,ほとんどの歯がむし歯となっていた。
徳川将軍もむし歯の痛みに悩まされたことであろう


<12代徳川家慶の頭蓋骨
面長で顎の骨が華奢なことがわかる
(『骨は語る 徳川将軍・大名家の人びと』
鈴木尚/東京大学出版会より)。 >

それでは当時,宮中ではどうだったのだろう?
やはり軟らかな食事をしていたのだろうか?
この点についてのヒント。それは雛人形に隠されているのではないかと思う。
雛祭りは,平安時代に"ひいな祭り"として宮中で誕生した。
そして江戸時代,庶民の間で流行した。
寛永・元禄・享保の各時代である。
ところで元禄時代の雛人形は,比較的丸い顔をしている。
ところが享保時代の雛人形は,面長な顔となっている。
この顔の違いは,何に由来するのだろう?
元禄時代と享保時代の間は,わずか10年あまりしか経ていない。
単に,その時代の流行の差だけなのか?

元禄時代は,江戸時代において町民文化が栄えた時代として有名だ。
井原西鶴や松尾芭蕉を始め,歌舞伎や絵画のみならず,食生活も
大きく変化した時代なのだ。
それまで一日二回食であったものが,三回食になったのが,この時代。
また庶民の口に砂糖が入り始めたのも,この時代。
さらに玄米から精製米を食べ始めたのも,この時代。
箱根の峠を越えると"江戸患い",上方では"上方腫れ"と言われる奇病が流行した。
今で言う,ビタミンBの不足による脚気である。


<享保雛>

<元禄雛>
<元禄雛は丸顔に対し享保雛は面長である。
どうして異なった顔をしているのだろうか?>

さて雛人形は。きっと宮中の人々をモデルにしたに違いない。
だとすれば元禄時代の食生活の変化が,享保雛の顔に影響を与えたのかもしれない。
そのような目で雛人形を眺めると楽しみが増える。


<よく噛むことでかむ筋肉が発達し,それに伴い骨も頑丈に
なり四角い顔となる。>


<噛むことが少ないと、筋肉も骨も発達する必要がない。>


それでは噛むことと顔の形はどう関係するのだろう?
まず顎のがっちりした顔は,噛む筋肉の力が太くて強い。
健康な歯でよく噛むことで,噛む筋肉(咬筋)が発達する。
筋肉が強くなれば,それに応じて骨も厚くなる。
だから四角いエラ張り顔になる。
一方むし歯が多い場合,あるいは健康な歯であっても噛むことが少なければ,
筋肉が発達する必要がない。だから顎の骨も薄く華奢になる。
これが現在の若者の特徴的な顔なのだ。

このままの状態が続くと人間は,どんな顔になるだろう?
脳が発達し,顎が小さい。しかも運動不足で手足の骨も細く長くなってくる。
これは空想で描かれた火星人の姿に似てないか?
火星人は,火星に住んでいたのではなく,誰かがタイムマシーンに乗って,
人間の近未来を見てきたのかもしれない。

モンゴル健康科学大学 客員教授 岡崎 好秀 先生
(前 岡山大学病院 小児歯科 講師)

子供も楽しめる保健指導情報を 「Dr. 岡崎の口の中探検」にて好評連載中。

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